2016年12月02日

東京日記1

23時過ぎ、梅田から高速バスに乗った。三列シートのアイランド席。ちょうどバスの真ん中でトイレの真ん前だった。「出入りがあると眠れないかもしれない」と思いながら荷物を窓際頭上の棚に上げ、上着を脱いでいたら前の席に座った兄ちゃんが「席倒してもいいですか?」と聞いてきたので「どうぞ」と答えた。このときやっと上着を脱いで、一旦座席に腰を下ろして靴の紐を緩めようとしたところだった。屈もうとしたときに前の座席が倒れてきたので、オッと姿勢を戻すも止まる気配なく、倒せる限界まで倒してきた。

「嘘だろ?」と思いながらややスローモーションに見えた。
「嘘だろ?もう靴ひもも解けないじゃないか」と瞬間的にキレそうになったが。倒していいと許可したのもこちらだが、いくら許可されたからといって万全の姿勢でなく準備中の人間がいるのにフルで倒すか?倒すのか?さっきの「倒していいですか?」って挨拶みたいなもので、こちらとしても「倒していいけど、僕が準備万端になるまでは様子見ながら倒してくれるよね?」という想いで「どうぞ」と答えたわけである。これでは開店準備中のラーメン屋を覗いてきた客が入り口から顔だして「まだ早かったですか?」というので「まだだけど、外は寒いから中で待ってもらっても構いませんよ」と店主が返事したのを聞いて座席に着くなり開店準備を急ぐ店主の背中に向かって「ラーメン!水は!」と言うようなものではなかろうか。

悶々と前の席の男の後頭部を睨みつけながらどうにかこうにか脇腹を攣らせながら靴を脱ぎ、倒れた前の座席の下に置いたカバンの中から音楽プレーヤーをノールックで探しだした。その間目の前の男は煌々と明るい携帯で女だろう相手に「今から梅田でます!楽しみ!」みたいな連絡をラインで取っていた。無表情で。背もたれを全開で倒して。後ろの男に睨まれながら。


バスの待合所でも「お前(ら)どないやねん」ということがあった。

待合所は様々な目的地のバスが絶えず出発しては、どこからか来て、また出発するという非常に活気のある場所で、スタッフの人たちもベンチコートを来つつどのバスが着きました、どのバスが出発5分前ですとか常に何かしらの情報を半ば叫びつつ誘導に勤しんでいた。とはいえ、乗客も能動的且つ自主的に自らが乗るべきバスの情報を聞き分けて正しい行動を取らなければ自分だけじゃなく他人にも迷惑をかける雰囲気だということはひしひしと感じており、手に持ったチケットやスマホの予約画面を始終確認している人が多い。発車5分前になっても来ていない乗客外いる場合はスタッフのスマホやイヤホンに連絡が来るようになっており、その乗客の名前とバスの番号を連呼してくれるということも目の当たりにした。

僕が乗るバスの便の一つ前の便のバスが定刻なのでと続々と出発する中、何度も名前を呼ばれているのに現れない乗客をギリギリまで待つバスがいた。それでももうこれ以上待つと次々と入ってくる他のバスに迷惑がかかるとトランクを閉め、運転手が乗り込もうとしたときに、僕の目の前に立っていた二人の女子大生風の女が「前田(仮名)って私も前田です!え!?このチケットってあのバスですか?」と名前を叫ぶ女性スタッフにかけよりながら聞いた。「あのバスです!急いでください!」と最低限の返事のみでバスの方向を向き、乗客がいたことをバスの前にいたスタッフに示した。間一髪で乗れたのだが、じゃあ一体その女たちはすぐ目の前で発狂寸前に叫んでいたあのスタッフの声はどう届いていたのか、また自分の乗るべきバスの番号や時間をどうしてもっと入念に確認しないのかと不思議でしょうがなかった。待っている間の彼女たちは他愛もない話をしている風で、バス乗り過ごしたら予定おじゃんやもんね!という緊張感に欠けていたのは明らかだった。

どういう気持ちやねん!?という気持ちになった夜だった。


そしてバスは走り出し、自分の背もたれも倒したことで多少のスペースも生まれたので、どうにか深夜バスに対する体勢を整えたのだった。

その後何事もなくバスは東京を目指した。明けて朝、町田が最初の降り場で前の座席の男が急いで荷物を手に降りて行ったが、案の定倒した座席を戻すことなく降りて行ったのだった。またも怒りに震えながら体をよじって操作バーを引いて戻していたら、忘れ物の確認に懐中電灯を手に男が戻ってきた。「あれーあれー」と小声で独り言を言いながら何かを探していた。

午前9時過ぎ。定刻より少し遅れて新宿南口のバスターミナルに着いたのだった。


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posted by さだおか at 10:07| 兵庫 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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