2016年10月24日

天狗の鼻は二度折れる 文章公開3

昨日一昨日と胃腸風邪に苦しんでしまい文章公開が出来ず、ライブ当日まで近々となってしまいました。講釈垂れずに早速文章公開です!



スキャン 1.jpg













使い物にならなくなった眼球をほじくり出し、たった今飲み干したばかりの泥の水溜りに捨てた。その時丁度雨が降り始め、眼球を捨てた水溜りにまた水が溜まり始め、俺はその水溜りに顔を埋めたまま身動き一つせず、雨を浴び続けた。水溜りの底の泥に俺はまだ顔を浸けたまま、体全体が水の中に入ってしまう程に水たまりは大きくなっていった。苦しくはない。また同時にその様子を空の上から俯瞰で見下ろす俺もいた。いや、正しくはそういった情景が思い浮かんだだけかもしれない。その空から見下ろす俺の顔はひどく赤く、背中にはカラスのように黒光りする羽が生えていた。その俺は飛んでいるのではなく、浮かんでいるといったその様子で、水溜りに浸かる俺は面白がった。第一、空に居る俺と今の底に居る俺とは全く姿形が違っているものの、「俺」という意識下に於いて完全に同じだった。「だから苦しくないのか」と妙な納得の仕方をして、その状態を楽しんでいた。
「いつまでそうやっとるんや、お前。とうに死んで、水も泥も食わんで済むのに、一体何をしょんのや」
聞こえたというよりも頭の中で響いたといった感じだろうか。では俺もお前に応えてやろう。

「何で空に浮いとんのや。お前のその赤い顔も何や。その妙に長い鼻も何様や。俺がさっき捨てた眼球を何でお前が付けとるんや」

「お前の目は何にも見えんな。一里も見えんのは可哀想やから、俺の目となって千里先の赤子の足の爪まで見えるようにしてやっとんのや。ほら」
 と言われた瞬間、泥に顔を埋めたままの俺に赤ん坊の足の爪が見えた。
「赤いの、お前は神さんか何かか」
「おいおい、俺を神なんぞと勘違いするなよ」
 笑ったような、怒ったような表情で真っ赤な俺は水の底の俺を諌めた。
「おい、そこに丁度蓮根が埋まっとるからそれ持って上がって来い」
 指先に触れる何かを掴み、顔を上げた。
 そこには泥の池もなく、雨も降った跡はなく、空に浮かんだ俺もいない。ただ、ちょうど腕の長さと同じ位の蓮根が右手に握られていた。あの時間は何だったのだ?あいつは何だったんだ?どうして会話が出来たんだ?第一、目は焼けて見えないはずなのに見えている。耳も潰したはずなのに音が聞こえる。しかし鼻はきかないままだった。背中に羽が生えているような気がして蓮根で背中を掻いたが何も引っ掛かる物はなかった。手に持った蓮根の穴から「早くその蓮根を鼻があった場所にあててみろ、あほが」とさっきの真っ赤な俺の声が聞こえたので言うとおりにしてみた。


 ポン。ポン。ポン。ガヤガヤ。ヤンヤヤンヤ。


 俺の鼻に刺した蓮根から花が咲き。そこで花見をしようとたくさんの人間が酒や食べ物を携えてやって来た。ある者は俺の唇で踊り、ある者は俺の眉に小便を垂れ、ある者は俺の頬で夜這いをしたりと、まる一晩そこで花見をして騒ぎに騒いだ。鬱陶しく、人が動く度に顔も痒いので、いっその事その蓮根の花さえなければそいつらも帰るだろうと思い、その花を摘もうと手を伸ばしたが全く届かない。不思議と全く届かない。花はおろか顔にすら手が届かない。何度やっても届かない。億劫になり諦めて眠ろうと横になったものの、その乱痴気騒ぎは一晩では済まず、何日も昼夜関係なく騒ぎ散らかし歌い踊った、一向に終わる気配はなく、おかげで俺は何日も眠れずに過ごした。何日も何日も俺の顔の上で歌い踊り酔っ払う人々の顔は、まるで天狗のように真っ赤だった。俺は諦め、空を見上げ、目を瞑った。







今夜にでも4を、明日には最終5を公開いたします。
posted by さだおか at 10:02| 兵庫 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | Live | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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